経済

【社会保険制度】病気や怪我のリスクへの備え

この記事では社会保険がカバーしている7つのリスクのうち、『病気やケガのリスクへの備え』について解説していきます。
我々が病気やケガにかかった時に社会的にどのようなセーフティーネットが敷かれているのかを正しく理解する事で、無用な心配事に悩む事なく人生設計していくことができるようになります。

まずは公的医療保険制度の基礎的な部分を解説してきます。

①日本は『国民皆保険』である

日本では職業によって加入する保険に多少の違いはあるものの、国民みんなが公的保険に入る事ができるようになっています。

①会社員・公務員→健康保険
②自営業・フリーランス→国民健康保険
③高齢者:後期高齢者医療制度

一般企業に務める会社員や公務員の人が入るのが『健康保険』です。勤務先によって「健康保険組合」・「協会けんぽ」・「公務員共済組合」など、保険者が異なります。

自営業やフリーランスの方が加入できるのが『国民健康保険』です。会社員が加入する健康保険と名前が似通っててややこしいですが、別です。

そして75歳以上になったら自動的に移行する『後期高齢者医療制度』です。

今でこそ当たり前の公的保険ですが、今のように国民全員が加入できるようになったのは1961年の事で、私の親世代が生まれた頃にはまだ制度として無かったんですね。そのころは国民の3分の1にあたる約3,000万人が無保険状態で、医療を受けられずに亡くなってしまった方々も大勢いたみたいですね。

よく言われますが、アメリカなんかでも、医療保険に加入していない人が約2,750万人もいると言われていて、医療も受けられない人もいます。

当たり前のように過ごしていますが、ありがたいですね。

しっかりと内容を把握しておきましょう。

②理念は『必要最小限・平等』

あくまでも公的な保険制度ですので、理念は必要最小限で平等』です。

保険証さえ持っていれば、全国どこの医療機関でも医療を受ける事ができますし、治療費が変わる事もありません。「平等」に扱ってもらえる、という事ですね。

ちなみに日本で盲腸の手術を受けた場合にかかる手術費用はどこでも30万円程度ですが、アメリカのニューヨークでは150~450万円かかると言われています。お金があればあるほど良い医師・良い病院に診てもらえるという世界ですね。

そして、あくまでも「必要最小限」なので、いくつか保険対象外になっているものがあります。

公的医療保険の”対象外”になっているもの

先進医療
治療以外の医療行為
保険対象外の医薬品
病院の個室

保険対象外というとなんとなくビビりますが、わかってしまえば、「なんだそういう事か」という事になります。

先進医療

先進医療というのは、あくまでも「効果があるかどうか検証中の、まだ保険適用になっていない医療」の事に過ぎません。最先端の医療技術を使った素晴らしい技術ではありません。

効果がある医療はちゃんと保険対象になっています。

決して「お金持ちだけが受けられる病気が治る可能性の高い医療行為」などという事ではありません。

治療以外の医療行為

「美容整形」とか「レーシック」とかの事ですね。必要な医療行為ではないですからね。あくまで『必要最小限』なので、こういう医療行為は適応外になります。

病院の個室

いわゆる差額のベッド代ですね。大部屋でいいじゃないですか。大部屋か個室か、そんな事は病気の快復に直接関係があるわけではありません。

どうしてもプライベートが欲しいのであれば、あくまでもそれは贅沢品ですので、その分お金を支払うようにしましょう。そのためにも貯蓄しておけば良いだけですね。

 

③自己負担は原則3割(上限あり)

かかった医療費の自己負担額は3割ですので、例えば医療費に10,000円かかったとすると、その病院の窓口で支払う金額は3,000円で済むことになります。

となると、手術や入院で一月に100万円かかったとすると、窓口で支払う金額は30万円になるのかと思いきや、実際には10万円程度しか支払う必要がありません。

高額療養費制度

ここで登場するのが『高額療養費制度』です。

同じ月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合→自己負担限度額を超えた分が後で払い戻されます。

ちなみに、あらかじめ「限度額適用認定証」の公布を受けておけば、最初から自己負担限度額になります。

あとで返してもらえるとはいえ、一度に高額の支払いをするのが苦しい人にとってはありがたい制度ですよね。

自己負担額がいくらになるかは、その人の所得と年齢で決まりますが、70歳未満の方は以下の表を参照に試算する事ができます。

ちなみに、私が月に総医療費100万円の治療を受けたとした場合、上記の表③に該当しますので、自己負担額は87,430円になります。

仮に窓口で一時的に30万円の支払いを行ったとしても、差額の212,570円が後ほど返ってきますし、あらかじめ限度額申請を行っておけば、最初から87,430円で済むという事になります。

どれだけ最悪の事態を想定しても、100万円の貯金があれば病気やケガにかかった際に支払う医療費・治療費に困る事はまずなさそうですね。

100万円の現金貯蓄があれば、病気・ケガの治療費に恐る必要はない。

健康保険のメリット

会社員が加入している健康保険にはまだまだ手厚い点があります。

保険料の半分は会社が負担

個人事業主・フリーランスの方が加入する国民健康保険は全額自己負担である事に対して、会社員が加入する健康保険の保険料は勤務先の会社が半額負担してくれます。

保障内容に対して非常に割安であるといえますね。

扶養制度

国民健康保険には扶養制度という概念がなく、妻子がいる場合は彼らの保険料も負担する必要がありますが、健康保険においては妻子を扶養家族にする事で、彼らの保険料は免除されます。

大変お得ですね。

傷病手当

傷病手当金とは病気や怪我で働けなくなった時に生活を保障するために支給されるお金で、以下の4つの条件を満たす場合に支給されます。

傷病手当支給条件

①業務外の病気や怪我により休業している事
②療養のために仕事につくことができない事
③連続する3日間を含み。4日以上仕事に就けない事
④休業中に給与の支払いがなかった事

受給期間は1年6ヶ月で受給額は平均月収の3分の2です。

まとめ

最後に、我々日本国民が加入している健康保険もしくは国民健康保険について簡単にまとめておきます。病気やケガといったリスクへのセーフティネットとして全国民に与えられている社会保険として必ず理解しておくべきですね。

①原則3割負担で必要な医療が平等に受けられる

②高額療養費制度のおかげで自己負担額の上限額はせいぜい月に10万円程度。

③保険料は会社と折半。扶養家族の分の保険料は払わなくてOK(健康保険の場合)。

④病気や怪我で働けなくなっても1年6ヶ月は保障がある。

社会制度を正しく理解し、必要な時に正しく活用し、人生を効率的に進めていきたいですね。

ではまた。