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【2020年度版】(業界展望)有機EL・液晶パネル

ディスプレイ市場の業界展望についてまとめてみました。

基本情報の整理

『有機EL』や『液晶パネル』に代表されるディスプレイは主にテレビ向けの『大型パネル』、そしてパソコンやスマートフォン向けの『中小型パネル』に分類する事が可能です。

業界全体の潮流としては現在主流の『液晶パネル』から、『有機ELパネル』にシフトしつつあります。

パネルは液晶が主流でしたが、素子が自発光する性質を持つ有機ELは、薄型・軽量化を可能にし、高い柔軟性により変形させる事も容易です。

その上、色の再現性に非常に優れているので、大変美しい画像を映し出す事ができます。

課題はやはりコストですが、今後様々なメーカーが参入していく事で長期的には低価格化が期待できると言えます。

近年の業界動向【短期で見ると不振】

直近の指標でいうと、有機ELパネルと液晶パネルはいずれも出荷数が減少傾向です。

とりわけ中小型パネルにおいてはスマートフォンの販売不振の影響を受けて需要が低迷しています。

大型パネルは中国勢が国策による後ろ盾を受けて増産投資を行った事で、需給バランスが崩れて市況の悪化を招きました。

スマートフォン向けの有機ELパネルは韓国サムスン電子が独占してきた市場でありますが、2018年は中国のBOEが本格的な量産体制に踏み切るなどの参入が相継ぎました。

一方テレビ向けの有機ELパネルは韓国LGディスプレイがシェアの大半を占める状態が継続しています。

そんな中、中国勢は大型パネル工場の投資を継続しています。2019年はCSOTが最新鋭の10.5世代(G10.5)の工場を起工しています。

日本のJOLEDは海外メーカーに対してテレビ向けの有機EL技術のライセンスビジネスを目指しています。

各国勢の様相

以下のドル建て出荷額は2018年の実績値を記載

中国勢

南京中電熊猫信息産業集団(CEC Panda)

シャープから引き継いだ技術をベースに生産能力を拡大中

出荷額

大型パネル:16億ドル

華星光電(CSOT)

中国家電大手TCL集団のグループ会社

出荷額

大型パネル:33億ドル

京東方科技集団(BOE)

大型液晶パネルの出荷枚数で世界首位

出荷額

大型パネル:103億ドル
中小型パネル:42億ドル
有機ELパネル:2億ドル

維信諾顕示技術(Visionox)

中国河北省に先端工場を稼働

出荷額

有機ELパネル:2億ドル

天馬微電子(Tianma)

NECの液晶子会社を買収。車載パネルを強化。

出荷額

中小型パネル:48億ドル

韓国勢

サムスン電子(SAMSUNG)

有機ELでシェア80%。有機ELシフトを先導。

出荷額

大型パネル:70億ドル
有機ELパネル:193億ドル

LGディスプレイ(LG Display)

テレビやスマートフォン向けなど幅広く手掛ける。有機ELも量産。

出荷額

大型パネル:157億ドル
中小型パネル:38億ドル
有機ELパネル:29億ドル

台湾勢

友達光電(AU Optronics)

テレビ向け中心。車載用にも注力。

出荷額

大型パネル:83億ドル
中小型パネル:20億ドル

群創光電(Innolux)

鴻海グループでテレビ向けが主力。

出荷額

大型パネル:76億ドル

日本勢

シャープ[6753]

台湾鴻海傘下でテレビやスマートフォン向けを展開

出荷額

大型パネル:28億ドル
中小型パネル:33億ドル

ジャパンディスプレイ(JDI)[6740]

中国投資会社などの企業連合と金融支援の受け入れで合意を結ぶ。2019年内の払込みを予定。

出荷額

中小型パネル:56億ドル

JOLED

パナソニックとソニーの有機ELパネル事業を統合。2020年に印刷方式による本格量産を目指す。

今後のディスプレー市場の覇権争い

今後のディスプレー市場の勢力図としては、従前の液晶と有機ELの勢力争いに加えて、今後は『次世代ディスプレー』の覇権争いに注目が必要。

『印刷式有機EL』の他に、ナノ粒子を使った『量子ドットディスプレー』や微細な発光ダイオードを敷き詰めた『マイクロLEDディスプレー』などが有力。

技術名 主なメーカー
印刷式有機EL JOLED、CSOTなど
量子ドット サムスン電子など
マイクロLED ソニー、サムスン電子
シャープ、天馬微電子